川崎市獣医師会
本記事は、公益社団法人川崎市獣医師会に所属する獣医師の専門的な監修のもと執筆しています。
フィラリア症とはどのような病気なのか
フィラリア症(犬糸状虫症)は、犬糸状虫(Dirofilaria immitis)という寄生虫が体内に寄生することで起こる病気です。
この寄生虫は主に心臓や肺動脈に寄生し、血液の流れを妨げながら徐々に体にダメージを与えていきます。
感染が進行すると、咳、運動を嫌がる、呼吸が苦しそうになる、腹水がたまる、失神、心不全などの症状が現れ、重症の場合は命に関わることがあります。
フィラリア症は予防が非常に重要な病気であり、適切な予防を行えばほぼ防ぐことができます。
フィラリアはどのように感染するのか
フィラリアは犬から犬へ直接感染するわけではありません。感染には蚊(か)が関与します。
感染の流れは次のようになります。
- フィラリアに感染した犬の血液を蚊が吸う
- 蚊の体内で幼虫が発育する
- その蚊が別の犬を刺す
- 幼虫が犬の体内に侵入する
- 数か月かけて心臓や肺動脈に到達する
つまり、蚊が活動する地域では常に感染の可能性があるということになります。
川崎市でも感染のリスクがあります

都市部だからフィラリアは少ないのではと思われることがありますが、実際には都市部でも感染リスクは十分あります。
川崎市では、多摩川周辺、公園、住宅地の植え込み、雨水がたまる場所など、蚊が発生する環境が多く存在します。
蚊は数百メートル以上移動することができるため、屋外に出る機会が少ない犬でも感染の可能性があります。
フィラリア症は気づきにくい病気です
フィラリア症の怖い点は、初期症状がほとんどないことです。
感染しても数年間は目立った症状が出ないことがあります。その間にも体内では寄生虫が増え、心臓や肺に負担をかけ続けます。
症状が現れた頃には心臓病、肺高血圧、右心不全などが進行していることも少なくありません。
そのため、症状が出る前に予防することが最も重要です。
「治療」ではなく「予防」が大事
一般的に「フィラリアの薬」と呼ばれるものは、寄生した成虫を駆除する薬ではありません。
予防薬は、感染した幼虫を体内で駆除する薬です。
蚊に刺されて体内に侵入した幼虫を早期(1ヵ月以内)に駆除することで、心臓まで到達するのを防いでいます。
この仕組みのため、毎月継続して投与することが非常に重要になります。
1ヵ月に1回投与するタイプの薬は、1ヵ月間ずっと効いている訳ではなく、投与した“その時”に駆除する薬であることも重要なポイントです。
蚊の出る時期が終わってから、もう1回投与することを忘れてはいけません。
予防を始める前には検査が必要です
フィラリア予防薬を開始する前には、通常血液検査によるフィラリア検査を行います。
すでにフィラリアに感染している犬に予防薬を投与すると、体に負担がかかる可能性があるためです。
そのため動物病院では、フィラリア検査と健康チェックを行った上で予防を開始します。
フィラリア予防の期間
フィラリア予防は一般的に蚊が活動する時期+1か月行う必要があります。
関東地域では通常5月頃〜12月頃まで予防するケースが多くなっています。
ただし近年は暖冬の影響で蚊の活動期間が長くなっているため、通年予防を行うケースも増えています。
フィラリア予防薬の種類
現在、動物病院ではさまざまなタイプの予防薬が使用されています。
- 内服薬(おやつのように食べるタイプ)
- スポットタイプ(皮膚に滴下する薬)
- 注射タイプ(長期間効果が持続する製剤)
生活スタイルや体質によって適した方法は異なるため、動物病院で相談して選ぶことが大切です。
まとめ
フィラリア症は心臓や肺に寄生する寄生虫感染症で、進行すると命に関わる非常に危険な病気です。
しかし適切な予防を行えば、ほぼ100%防ぐことができます。
愛犬の健康を守るためにも、毎年のフィラリア検査と予防薬の継続投与を忘れずに行いましょう。
予防については、お近くの動物病院にご相談ください。






