川崎市獣医師会
本記事は、公益社団法人川崎市獣医師会に所属する獣医師の専門的な監修のもと執筆しています。
フィラリア症は犬だけの病気ではありません
フィラリア症(犬糸状虫症)は、蚊によって媒介される寄生虫感染症で、一般的には犬の病気として知られています。しかし実際には、猫にも感染する可能性がある病気です。
猫の場合、犬に比べて感染例は多くありませんが、感染した場合は突然重症化することがあるため注意が必要です。さらに猫では症状が分かりにくく、診断が難しいことも多いため、飼い主の方にあまり知られていない病気でもあります。
猫はどのように感染するのか
猫のフィラリア症も、犬と同じように蚊によって感染します。
感染の流れは次のようになります。
- フィラリアに感染した犬の血液を蚊が吸う
- 蚊の体内でフィラリア幼虫が発育する
- その蚊が猫を刺す
- 幼虫が猫の体内に侵入する
- 血管や肺動脈に到達する
つまり、蚊がいる環境では猫も感染する可能性があるということになります。
完全室内飼育でも感染する可能性があります

「うちは室内飼いだから大丈夫」と思われる方も多いですが、実際には室内飼育の猫でも感染が確認されています。
蚊は玄関の開閉、網戸の隙間、換気、ベランダなどから室内に入り込むことがあります。そのため、完全室内飼育の猫でもフィラリア症のリスクはゼロではありません。
猫のフィラリア症の特徴
猫のフィラリア症は犬とは病態が異なります。
犬では多数のフィラリアが寄生することがありますが、猫では1~数匹程度しか寄生しないことが多いとされています。しかし少数でも強い炎症反応を起こし、肺に大きなダメージを与えることがあります。
この病態はHARD(Heartworm Associated Respiratory Disease)と呼ばれ、猫特有のフィラリア関連呼吸器疾患として知られています。
猫のフィラリア症の症状

猫のフィラリア症では次のような症状が見られることがあります。
- 咳
- 呼吸が苦しそう
- 嘔吐
- 元気消失
- 食欲低下
- 体重減少
しかし猫では症状が非常に分かりにくく、突然死として発見されるケースもあります。
猫のフィラリア症は治療が難しい
犬のフィラリア症では寄生虫を駆除する治療法がありますが、猫では安全に成虫を駆除する治療法が確立されていません。
そのため猫のフィラリア症では、炎症を抑える治療や呼吸症状の管理などの対症療法が中心となります。
つまり猫では、犬以上に「予防」が非常に重要な病気といえます。
猫のフィラリア予防
猫のフィラリア症は予防薬によって防ぐことができます。
現在はスポットタイプ(皮膚に滴下する薬)などの予防薬が広く使用されています。これらの薬はフィラリア予防と同時にノミ予防などを行える製剤もあります。
予防は通常、蚊が活動する時期(春〜秋)に行いますが、最近では通年予防を行うケースも増えています。
まとめ
フィラリア症は犬だけの病気ではなく、猫にも感染する寄生虫感染症です。
猫では症状が分かりにくく、突然重症化することもあります。また安全に寄生虫を駆除する治療法が限られているため、予防がとても重要です。
愛猫の健康を守るためにも、フィラリア予防について動物病院で相談することをおすすめします。






