犬や猫にとって危険な「チョコレート誤食」―知っておくべき中毒のメカニズムと対策

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バレンタインや季節のイベントなど、私たちの暮らしの中で身近な存在であるチョコレート。しかし、犬や猫にとってチョコレートは命に関わる危険な食べ物です。わずかな量でも中毒を引き起こし、重症化すると命を落とすケースもあります。

このコラムでは、飼い主の皆さまに向けてチョコレート中毒の原因物質や症状、予防のポイントを詳しく解説します。

川崎市獣医師会

川崎市獣医師会

本記事は、公益社団法人川崎市獣医師会に所属する獣医師の専門的な監修のもと執筆しています。

目次

チョコレートが危険な理由 ―原因物質「テオブロミン」と「カフェイン」

チョコレートには、カカオ豆に含まれるメチルキサンチン系のアルカロイドである「テオブロミン」が多く含まれています。このテオブロミンに加え、同じく中枢神経刺激作用を持つカフェインも犬や猫の体にとって有害です。

犬と猫

テオブロミン・カフェインを分解する能力が低い犬や猫は、体内に長くとどまり、急速に毒性を示します。

カカオに含まれるテオブロミン

テオブロミンの中毒量は犬でおよそ100~200mg/kgです。200mg/kgを超えると致死的なリスクになります。

チョコレートの種類による含有量の違い

  • ダーク・製菓用チョコレート
    テオブロミン含有量が非常に高い
  • ミルクチョコレート
    ダークチョコよりは低いが、少量でも危険
  • ホワイトチョコレート
    カカオ成分はほとんど含まれないが、油脂による胃腸障害のリスクあり

例:体重5kgの犬がダークチョコレート30~50g程度を誤食した場合でも、命に関わる危険があります。

チョコレート中毒の症状

摂取量や体重により症状の重さは変わりますが、食べてから数時間以内に症状が現れることが多いです。

– 嘔吐、下痢
– 落ち着きがなくなる、興奮
– 頻脈(心拍数の増加)、不整脈
– 呼吸が早くなる
– ふらつき、震え、けいれん
– 体温上昇、昏睡

重症化すると急性心不全や多臓器不全により死亡することもあります。

川崎市でも実際に起きているチョコレート誤食の事例

クリスマスチョコレート

川崎市内の動物病院でも、バレンタインやクリスマスの時期を中心に、チョコレート誤食で緊急受診する犬や猫が毎年発生しています。なかには、飼い主が留守中に棚からお菓子を引き出して誤食するケースも少なくありません。

「ミルクチョコレート1~2枚だから大丈夫」と思い込むのは危険です。小型犬や猫では、それだけで命に関わる量になることがあります。

誤食が疑われる場合の対応

1.すぐに動物病院に連絡する

食べたチョコレートの種類、量、食べた時間、ペットの体重を伝える。

2.自己判断で吐かせようとしない

誤嚥や食道損傷の危険があり、逆に状態が悪化することがあります。

3.症状が出ていなくても必ず受診

胃洗浄や活性炭投与など、早期の処置が生死を分けます。

夜間や休日の緊急時は「川崎市獣医師会夜間動物病院」へ

診療時間外や休日にチョコレート誤食が発覚した場合は、迷わず川崎市獣医師会が運営する「夜間動物病院」へご連絡・ご相談ください。経験豊富な獣医師が電話でのアドバイスや緊急診療を行います。

川崎市獣医師会 夜間動物病院

電話番号:044-811-9950
受付時間:午後8時~深夜0時(最終受付 23時30分)
年中無休

チョコレート誤食を防ぐための予防策

  • テーブルや棚の上にチョコレートやお菓子を置かない
  • ラッピングされたギフトもペットの届かない場所へ
  • 子どもや家族にも犬や猫にチョコレートを与えてはいけない理由を共有
  • 誤食の危険が高まるイベント時期(バレンタイン・クリスマスなど)は特に注意

飼い主の心がけがペットの命を守ります

犬や猫はチョコレートの匂いに強く惹かれます。しかし、私たちにとって身近な食べ物でも、ペットにとっては強い毒性を持つものがあるということを、飼い主がしっかり認識することが大切です。

「少しなら大丈夫」「誤食するはずがない」という油断が命取りになりかねません。日頃からチョコレートをはじめとした危険な食品をペットの手の届かない場所に保管し、誤食の可能性をゼロに近づける生活環境を整えることが重要です。

最後に

チョコレート中毒は、飼い主のちょっとした注意で防げる事故です。しかし一度発症すると重症化するリスクが高く、最悪の場合、命を落とすこともあります。

川崎市獣医師会では、地域の会員病院とともに、チョコレート誤食をはじめとするペットの中毒事故を減らす啓発活動に取り組んでいます。

本コラムは、川崎市獣医師会の会員病院である池田動物病院より提供された情報をもとに執筆しています。
詳しくは以下の記事もご覧ください:

犬・猫が食べてはいけない食べ物について|池田動物病院
https://ikedaanihos.com/blog/2021/09/dog-cat-toxic-foods.php

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