夢といのちが交わる小さな動物園『夢見ヶ崎動物公園』ツアーレポート

夢見ヶ崎動物公園ツアーレポート

夢見ヶ崎動物公園は、川崎市幸区の加瀬山にある小さな動物園。入園無料で全ての人に開かれた素敵な場所です。ここでは馴染み深い小さな動物から絶滅が危惧される希少動物まで、さまざまな動物たちがのびのびと暮らしています。

今回は、小倉園長に動物園を案内していただきながら、動物たちの魅力や、飼育員の細やかな工夫、地域との繋がりなどを探っていきます。それではさっそく、夢見ヶ崎動物公園ツアースタート!

案内人:夢見ヶ崎動物公園・小倉園長

夢見ヶ崎動物公園

小型サル舎

夢見ヶ崎動物公園にはいくつか入口がありますが、今回は駐車場のあるおしみず坂方面から出発します。最初に出迎えてくれるのは小型サル。コモンマーモセットとワタボウシパンシェが暮らしています。

ワタボウシパンシェ

「ワタボウシパンシェのダンちゃんは、昨年の4月に千葉県からやってきた子です。日本動物園水族館協会(JAZA)のブリーディングローンという仕組みがあって、繁殖のために動物園同士で調整しながらペア相手をマッチングしています」

動物園には種の保存という大きなミッションがあり、動物園同士が協力して動物たちが絶滅しないように守っています。実際にこのブリーディングローンという仕組みで繁殖に成功した希少動物がたくさんいるそうです。

ワタボウシパンシェイラスト

「幸区の川崎総合科学高等学校にデザイン科があって、そこの生徒さんたちが描いてくれた素敵な絵を看板にしています。この詳しい手書きの解説はサポーターさんが作ってくれたものですね」

こういうのって、ついつい見てしまいますよね。他の動物園でもこのような解説はよく見かけますが、夢見ヶ崎動物公園の解説の特徴は、一個体の個性まで詳細に書いてあること。ワタボウシパンシェのダンちゃんは、丸っこくて愛らしい顔立ち。物怖じしない性格で、お見合い相手のまつくんとはとても仲良しだそうです。

レッサーパンダ舎

レッサーパンダ舎

「次は大人気のレッサーパンダ。餌の竹葉は麻生区の早野聖地公園からご提供いただいています。あそこにうんちがあるんですけど、竹葉を消化した便は緑色なんです。うんちする場所をだいたい決めていて、毎回同じところでするんですよね(笑)。ずっと竹葉を食べて、のんびり過ごしています」

ふわふわの毛並みもつぶらな瞳も本当に可愛いです。動きは意外にもアクロバティックで、木や柵を器用に登るそうです。見ているだけで癒されますね。

レッサーパンダ

バックヤード

続いて、特別にバックヤードを案内していただきました。

「ここには治療中の飼育個体や保護された個体などがいます」

夢見ヶ崎動物公園では、病気や負傷した野生動物を保護収容して治療やリハビリを行っています。この日もタヌキや鳥などたくさんの動物が静かに過ごしていました。

バックヤード

「ここが調理場です。動物によって食べるものは違うので、それぞれの餌量表にあわせて材料を量ったり切ったり。この子には何グラムというように、個体別でも配分が決まっています」

歯が悪いレッサーパンダのために用意されたペースト状の餌も発見。動物園で働く皆さんの影の努力が、この調理場の至る所から伝わってきます。毎日動物と向き合っているからこそできる手の込んだ仕事ですね。

バックヤード

マーコール舎

「事務所の向かい側にいるのがマーコールです。夢見ヶ崎動物公園は日本で最初にマーコールの飼育を始めました。珍しい動物の一種で準絶滅危惧種です。くねくねの大きな角があるのがオスで、これからの時期はヒートという発情期が始まり、オス同士で争いが始まります。ボスはメスを独占することができます」

そして翌年の5月、6月ごろには赤ちゃんが生まれるのですが、なんと来園者の目の前で出産が始まることもあるそうです。珍しい動物の出産シーンに立ち会えるのはとても貴重な経験ですね。

マーコール

「あそこにいるシオリちゃんは、生まれつき左足が悪く、手術をして3本足になったマーコールです。群れには入れられないので少し離れたところで飼っているんですが、人懐っこくておとなしい性格です」

歳のわりに幼い顔つきで、来園者からも人気のシオリちゃん。体調や気候などによっては、外に出ていない日もあるそうです。他の動物たちも、飼育員さんたちが日によって外に出す子を決めているんだとか。

マーコールイラスト

ペンギン舎

「フンボルトペンギンもすごく人気です。プールは夏だと1週間から10日に1回ブラシで全部洗わないといけませんね」

清掃のときは水槽の水を抜いて全洗浄しているそうです。ペンギンがプールで自由に泳いでいる姿をじっくり観察できるのも、プールを綺麗にしてくれる飼育員さんたちのおかげです。

ペンギン

「あそこにペンギンたちの部屋がたくさんあるんですが、決まった部屋に夫婦で入るんですよ。たまに浮気するペンギンもいますが(笑)。でも毎年卵をうむカップルはすごく仲良しです」

ペンギン

「それぞれ名前がついていて、実は名前の頭文字で何年生まれかが分かるようになっているんです。餌の魚はひとつひとつ手で与えるんですが、個体によって与え方も違います。もちろん飼育員はどれがどの子かを全部見分けることができますよ」

シシャモが好きな子、魚をお腹の方から食べるのが好きな子、手で揉んで少し柔らかくした方が好きな子。ペンギンたちの個性を飼育員さんは全て把握しているんですね。飼育員さんが書いた卵からの成長記録も展示されています。ペンギン愛が伝わってきますね。

ツアー

シマウマ舎・リクガメ舎

しまうま

「このハートマンヤマシマウマは絶滅が危惧されており、国内に4頭ほどしかいません。そのほとんどが夢見ヶ崎動物公園にいた子の子孫ですね」

動物園では馴染み深いイメージのシマウマですが、実はその中のいくつかの種は絶滅の危機に瀕しています。世界全体で考えなければならない問題です。

リクガメ

「その隣がリクガメ舎です。アルダブラゾウガメも国際的に保護されている種で、世界最大級のリクガメです。ライトや空調にはこだわっています」

リクガメも子どもたちに大人気だそうです。ちょうど餌やりの時間でしたが、意外と食べっぷりが豪快で驚きました。ちなみに、動物たちの餌を置く台なども飼育員さんが手作りする場合があるそうです。飼育員さん、本当にすごい。

サル舎

サル舎

「ここがサル舎です。クモザル、フサオマキザル、リスザルは動きがあるので、見ていて面白いですよね。なき声でコミュニケーションをとったり、家族で毛繕いしたり、道具を使ったりもします」

夢見ヶ崎動物公園にはサルがたくさんいます。クモザルに関しては手足だけではなく長い尾も器用に使いこなすそうです。「ケージに物を近づけるととられる場合があります」という注意書きもありました。

さる・イラスト

「ここには桜の木があるので、春はお花見もできますよ。桜とのコントラストがけっこう綺麗なんです」

桜の季節はもちろん、花びらが散った後も地面がピンク色に染まり、美しい動物園の景色を楽しめます。ベンチに座って動物を観察しながらぼーっとするのもいいですね。

ソメイヨシノ

ホンシュウジカ舎

「ここにいるのはホンシュウジカ。ちょうど先週、除角しました」

秋ごろの繁殖期になると、オス同士が角をぶつけ合うようになります。そこで、飼育員さんやシカ同士の怪我を防止するために角切り(除角)を行っています。角は1年サイクルでまた生えてくるそうです。

ホンシュウジカのツノ

シカの角は1歳は1本、2歳になると2本、3歳になると3本、それ以上になるとみんな同じように枝分かれします。生えかけの頃は「袋角」と呼ばれる丸っこい角で、繁殖期に近づくと袋角が剥けて白い角が露わになります。春夏秋冬でこんなに変化するなんて、不思議ですね。

ツノ・イラスト

小獣舎・インコ舎・キジ舎

「ここからは比較的のどかな小動物が暮らしています。うちのSNSで一番再生数を稼ぐのが、タヌキのゲンマイです。『ゲンマイざんまい』というコーナーでこの子を載せると再生数2万回くらいいきますね」

全国のタヌキ愛好家の中でも美タヌキとして有名なゲンマイ。他の動物園のタヌキは木陰や草むらに隠れてあまり姿を見せないことが多いですが、ゲンマイは生後間もない時期に保護され飼育員さんに育てられたため、特定の職員さんにはとてもよく慣れています。

小獣舎

「インコ舎からはよく綺麗な鳴き声が聞こえます。この辺りをぶらぶらしているとけっこう癒されますね」

来園者の中には鳥が好きな方もたくさんいらっしゃいます。毎日声をかけると、おしゃべりしてくれるようになるそうです。

「夢見ヶ崎動物公園では、パラワンコクジャクの血統の管理をしています。これも種の保存の一環で、動物園ごとに責任を持って血統を保存する種が決まっているんです」

パラワンコクジャクという名前は初めて聞きましたが、メタリックブルーの羽がとても綺麗です。光の当たり具合で色が変化します。

みんなの夢が咲く動物園

夢見ヶ崎動物公園

「ここは土地に根付いた動物園で、地域の方々が季節のお花を植えてくれたりもします。お花の季節は綺麗ですよ」

入園無料、駐車場も無料で、動物園の隣にある公園でも自由に遊べます。富士見デッキと呼ばれる展望台もあり、晴れた日には富士山を見ることもできます。動物を見にくる人だけではなく、お散歩やランニングで来園する人も多いそうです。

夢見ヶ崎動物公園

「敷地がそんなに広くないので、迷子になる子が少ないんです。親御さんが手を繋がなくても、お子さんが自由に好きな方向に行くことができる場所なんですよね。家族で来て、まなざしと会話の真ん中に動物がいて、選択肢は子どもにもちゃんとある」

動物を観察する、散歩する、土遊びをする、昆虫を探す、絵を描く、会話する。選択肢は大人のものだけではなく、全ての命に平等に存在します。それはもちろん動物にも当てはまります。気が向いたら外に出る、お腹が空いたらご飯を食べる、運動したいときに運動する。その自由さが夢見ヶ崎動物公園の優しい雰囲気を形作っています。

夢見ヶ崎動物公園

「人も動物も昆虫も植物も、生き物が同じように緑を享受し合えるような街づくりが川崎市でできるといいなと思います」

夢見ヶ崎動物公園はその名の通り、全ての命がそれぞれの「夢」をのびのびと描ける場所だと感じるツアーでした。川崎市幸区にある素敵な動物園、皆さんもぜひ訪れてみてはいかがでしょうか?

夢見ヶ崎動物公園
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