川崎市獣医師会
本記事は、公益社団法人川崎市獣医師会に所属する獣医師の専門的な監修のもと執筆しています。
尿が出ないとはどういうことか
犬や猫がトイレに何度も行くのに尿が出ない、排尿姿勢をとっても少量しか出ない、苦しそうに鳴く。こうした様子が見られたら「尿閉(にょうへい)」の可能性があります。尿閉は膀胱に尿がたまっているにもかかわらず排出できない状態を指し、短時間で命にかかわる重大な病態です。特にオス猫は尿道が細長く詰まりやすいため、尿閉を起こしやすいことが知られています。
尿閉の主な原因
1.尿道閉塞(もっとも多い原因)
結石や結晶が尿道につまり、物理的に塞いでしまう状態。尿道栓子(結晶や細胞、粘液の塊)が詰まるケースも多く、オス猫に典型的。
2.膀胱や尿道の炎症
膀胱炎や尿道炎が重度になると、粘膜の腫れや痛みで尿が出にくくなる。
3.腫瘍による閉塞
膀胱や尿道に腫瘍ができ、物理的に尿の通り道を塞いでしまうことがある。
4.神経性の排尿障害
椎間板ヘルニアや外傷による神経障害で、排尿のコントロールができなくなる。
放置すると何が起きるのか

尿が出ない状態が続くと、体内では以下のような重大な変化が進みます。
- 膀胱の過伸展:風船のように尿で膨らみ、筋肉の機能が失われる。
- 腎臓への逆流と腎不全:尿が逆流して腎臓に障害を与え、急性腎不全に進行。
- 尿毒症:体内の老廃物が排出されず血液中にたまり、吐き気、意識障害、けいれんを引き起こす。
- 膀胱破裂:過度の圧力で膀胱壁が破れ、腹腔内に尿が漏れると致死的。
これらは半日から1日程度で命に関わる事態に進むため、迅速な対応が不可欠です。
飼い主が気づくべきサイン
- トイレに頻繁に行くが、尿が出ない
- 苦しそうに鳴く、落ち着きなく動き回る
- 下腹部を触ると硬く膨らんでいる
- 元気消失、食欲低下、嘔吐
- 尿に血が混じっている、あるいは少量ずつしか出ない
「ただの便秘かも」と誤解されることもありますが、尿が出ない=一刻を争う緊急事態です。
応急処置はできるのか?
自宅でできる安全な応急処置はほとんどありません
- お腹を押して尿を出そうとする→膀胱破裂の危険
- 水をたくさん飲ませる→効果なし
- 市販の下剤や人間用の薬を与える→危険
飼い主にできる最も重要なことは、動物を安静に保ち、できるだけ早く動物病院へ連れて行くことです。
動物病院で行う処置
動物病院では、以下のような処置が行われます。
- 身体検査・触診・超音波検査:膀胱の状態を確認し、尿閉の有無を判断。
- 導尿(カテーテル処置):尿道にカテーテルを挿入し、詰まった栓子や結石を洗い流して膀胱を空にする。
- 点滴治療:尿毒症や腎不全を改善するための静脈輸液。
- 血液検査:腎臓の機能や電解質(特にカリウム)の異常をチェック。高カリウム血症は致死的不整脈の原因となるため、迅速な対処が必要。
- 再発予防:食事療法(尿石症対応フード)、投薬、環境改善などが指導される。
川崎市の夜間緊急体制

尿閉は夜間に発見されることも多い病態です。発症から時間が経過すると予後が悪化するため、夜間でもためらわず受診してください。
川崎市獣医師会 夜間動物病院
電話番号:044-811-9950
受付時間:20:00~24:00(最終受付 23時30分)
不定休
日常生活での予防
避難生活は人にもペットにも大きなストレスを与えます。普段のお気に入りの毛布やおもちゃがストレス軽減につながります。
- 新鮮な水をいつでも飲める環境を整える
- トイレの清掃をこまめに行い、排尿状態を観察する
- 尿の色・量の変化を日常的にチェック
- 尿路結石や膀胱炎の既往がある子は、獣医師の指導に従い食事管理を徹底する
- 冬場や運動不足時期は水分摂取が減るため結石ができやすく、特に注意する
まとめ
「尿が出ない」というのは、見た目以上に緊急性が高い症状です。数時間の遅れが命に直結することもあり、飼い主にできる最善の応急処置は「すぐに病院へ行くこと」です。
川崎市獣医師会は、飼い主の皆さまにこの知識を持っていただくことで、一つでも多くの命が救われることを願っています。






